アドバンスドアセットストア講座: アセットを使う前・使った後に気を付けること

さて、この講座シリーズも今回でいったんの区切りとなります。アドバンスド講座の2回目として、すでに結構アセットストアを扱いこなしている方向けのTipsを紹介します。
アセットの対応プラットフォームに注意する
アセットストアで販売されているアセットを選ぶ際は、対応しているプラットフォームをしっかり確認するようにしましょう。多くのアセットは、Unityが多く使われているPC/Mac/iOS/Androidで動くように作られています。
2D/3D素材系
ポリゴン素材や2D素材、音声素材などのアセットに関する対応プラットフォームへの影響は「容量」に左右されるケースが多いです。モバイルや携帯ゲーム機向けのタイトルには、なるべくコンパクトな容量のアセットを選ぶとよいでしょう。以前の記事でも紹介した「Mobile **」や「Mobile Optimized」がアセットの紹介文章中に記載されているものを選ぶことをおすすめします。
機能拡張系
Unityの機能を拡張するアセットについて、プラットフォームへの対応状況を判定する要素となるのは、
- 対象のプラットフォームの性能
- DLLファイルの有無
- ネイティブライブラリの有無
の3点です。
たとえばエフェクトを強化したり、ゲームパッドの入力をコントールしたりするアセットは、対応しているプラットフォームが明記されています。ハードウェアが対応している特定の処理やフォーマットを使ったアセットについては、自分がゲームをリリースしたいハードウェアが対応しているかどうか、確認するとよいでしょう。
また、「DLLファイルを使っている場合にソースコードが同梱されているかどうか」というポイントもアセット選びの基準になります。DLLファイルなどでライブラリ化されているとソースコードが見えず、自力での修正ができません。アセットによっては、コアとなる処理をDLLファイル化している通常版と、C#のコードがそのまま入っているPro版が分かれて販売されていることがあります。自力改造が必要そうな場合は、C#コードが入っている方を購入すると良いでしょう。
また、特定プラットフォームの機能を使うために.jarや.aar、.hなどの「ネイティブライブラリ」を利用している場合には、そのネイティブプラグイン経由で提供している機能が他のプラットフォームではサポートされていない可能性もありますのでご注意ください。
アセットをつかったゲームの配信におけるライセンス処理
初心者講座でも触れましたが、アセットを使ったアプリを配信する場合は以下のルールに沿っている必要があります。
- 基本的なライセンスはアセットストアのライセンスに従う
- 追加ライセンスがある場合はそのルールに従う
アセットストアの各アセットの紹介ページやReadmeなどで特に指定がないアセットは、そのままアプリに利用できます。
アセットが何らかの別のライセンスを内包している場合は、そのライセンスに従って権利表記や対応をする必要があります。代表的なものは「Apache License 2.0」「MIT License」です。
これらのライセンスは、アプリのユーザーが見えるところにライセンス本文を置くことを求めている場合があります。アプリ内に「権利表記」「クレジット」等のページを作って対応しましょう。たとえば、次のような形です。
権利表記のページは、縦スクロールでライセンス文書を表示するスタイルが一般的です。uGUIでテキストのスクロール表示を作る場合は、Scroll Viewの下にTextを置き、"Content Size Fitter"コンポーネントを使ってテキストの長さで自動的に調整させると簡単に作ることができます。
参考までに、上記画像のために用意したUnityデモプロジェクトをそのまま公開しておきます。権利表記ページを作る時間の節約にお役立てください。(表示されている文言はすべてダミーです。適宜差し替えてお使いください)
https://github.com/TakaakiIchijo/UnityLicensePageDemo
アセットの評価を送信する
さて、アセットストアで購入したアセットを活用して、あなたのプロジェクトが完成し、配信が始まったタイミングが来ましたら、ぜひアセットの作者に感想を送りましょう。アセット開発者、とくにスクリプト系のアセット作者は「どのくらい需要があるだろうか?」「使った人からは、どう思われているだろうか?」と、常に考えながらアセットを作っています。
ツール開発は時に「完全に無駄なものを作っているのではないか」という疑念との戦いだ。Unityの規模ですら「あなたの作ったツールのおかげでこれができたよ、ありがとう!」というたまに届く一通のメールを全社員で回し読みして明日への活力にするくらいだ。常用ツールかあるなら是非エールを。
— h.omae (@pigeon6) 2017年2月27日
購入したアセットがとても便利だった、あって開発が助かったという思いは、なるべく作者に伝えるようにしましょう。アセットストアではユーザーが★の数で評価を付けたり、レビューコメントを付ける機能が備わっています。
アセットの利用を検討しているユーザーの多くはレビューの内容を重視している傾向があります。世界中のユーザーの役に立つことができますので英語でコメントをしましょう。また、アセット作者名で検索してみてアセット作者が日本人でしたら日本語のコメントも併記しましょう。英語が不慣れな方にとって英語でのレビューコメントはハードルが高いですから、テンプレートを用意しましたのでご活用ください。
例文
- It’s so useful. This is what I want. Thank you!
- When I just started to use this asset, I’m feel in love with it.
- This asset is totally useful more than my colleague.
最後の1つは冗談です。例文といいながら実は完璧な英語ではないと思いますが、大事なのは行動と気持ちです。
アセットの不具合かな?と思ったら
アセットストアの紹介ページには「サポート ウェブサイト」という名前でそのアセットを開発した個人・会社のウェブサイトへのリンクが掲載されています。
公式サイトでは、最新の不具合情報や修正についての予定など、新しい情報を得ることができます。もしかしてバグかな?と思ったら、まずはアセットの公式ウェブサイトを確認してみましょう。特にUnityのバージョンアップデート直後にはアセット側のバージョンアップが間に合っていないことに起因する不具合が出てしまう場合があります。
サポートサイトを確認しても不具合らしき挙動の原因がつかめない場合は、勇気をもって作者にその報告をしましょう。大抵はサポートサイトなどにフォームやメールアドレスが公開されています。筆者は2度ほどこうした問い合わせを行いましたが、稚拙な英語でもなんとかなるものです。
まとめ
これまで6回にわたって、アセットストアの基本から応用、そしてアドバンスド講座まで、幅広く機能やノウハウについて紹介しました。
これからも便利で素敵なアセットはどんどん増えていくでしょうし、ゲームクリエイターがさらにゲームを作りやすくなる新たな機能が生まれるかもしれません。もし、あなただけが知っているアセットストアの活用事例やノウハウがありましたら、ぜひお知らせください。
Unity Asset Portal編集部では、ゲーム開発者の可能性を広げる手法をいつでも歓迎しています。
この記事を書いた人
一條貴彰株式会社ヘッドハイ 代表取締役
ゲーム作家・Game DevRel。小規模ゲーム開発者がもっと活躍できる世の中作りを目指して、ゲーム開発ツール・サービス専門のDeveloper Relation事業を行っています。ゲーム作家としての代表作は『Back in 1995』(Steam)。