初心者向け「アセットストア」講座(後編)

前編ではUnity IDの取得と無料アセットのインポートまでを学びました。後編では、アカウントに紐づいたアセットの扱いや、アセットを使ったゲームを配布する場合の規約について学びましょう。
取得(購入)したアセットを別のプロジェクトでも使用する
アセットストアでは、無償のアセットであっても「0円で購入した」という扱いになり、あなたのUnity IDに購入履歴として紐づけられます。購入したアセットは、アセットストア内の「ダウンロードマネージャー」というセクションで確認できます。
Unityエディタを開き、Asset Storeウィンドウをメニュー -> Windowsから開いてみましょう。Asset Storeタブの上部に並んでいるアイコンの中に、箱のなかに矢印([↓])のアイコンが付いているものが見えると思います。このアイコンをクリックしてください。
ダウンロードマネージャーには、購入したアセットの一覧が表示されます。アセットを格納している「.unitypackage」ファイルが既にダウンロードされている場合は「インポート」ボタンをクリックできるようになっています。別のプロジェクトで以前購入したアセットを再び使いたい場合は、このダウンロードマネージャーから「インポート」を行うことができます。
また、たとえばスクリプト系のアセットをIDEで編集して破壊してしまった場合や、キャラクターモデル系のアセットがUnity エディタ内でPrefabが壊れてしまった場合などは、このダウンロードマネージャーから再インポートすることで、購入したときの最初の状態に戻すことができます。ただし、インポートしてから自分でフォルダ位置を移動していた場合は、アセットはもとの位置にインポートされてしまいます。プロジェクト内でファイルが二重持ちにならないよう注意しましょう。
さらに、ダウンロードマネージャーはブラウザからも確認できます。
Unityエディタを開かずに、いま自分がどのアセットを持っているかを確認したい時などに活用しましょう。
アセットの利用規約
Unityのアセットストアには、利用規約が定められています。
アセットストアで販売されているアセットはすべて、Unityが定めたアセットストアの利用規約に従って配信されています。アセット購入者に許可されている権利は以下の通りです。
- アセットを組み込んでビルドしたゲームの販売・配信
- アセットを改変して自分のゲーム開発に使用(サービス系SDKを含まない)
逆に許可されていない事項は以下の通りになります。
- アセット素材のまま販売・配信する(ビルドしていないプロジェクトファイルの公開を含む)
- サービス系SDKを改変してゲームに利用する
- 人数分の購入が必要なアセットをコピーして複数人で使う
それぞれについて補足します。
「アセット素材のまま販売・配信する」ことの禁止
この禁止事項には、アセットが素材状態で簡単に取り出せる形態で配信することも含みます。たとえばゲームジャムに参加して、ジャムのレギュレーションとしてプロジェクトファイルをネットで公開しなくてはならない場合、アセットストアから購入した各種アセットは取り除く必要があります。
「サービス系SDK」の改変禁止
自分で使う分には、配信されているアセットは改造して利用することができます。しかし、「サービス系SDK」に限ってはこれを禁止されています。
詳細な規約は、Asset Store Terms of Service and EULAにまとめられています。
個別ライセンスがあるアセット
アセットストアで販売されているアセットの中には、個別の規約が存在する場合があります。ゲームを配信・販売する際は、Unityが規定する利用規約に加えて、アセットの配信者が指定するライセンスに従う必要があります。たとえば、下記のアセットには「ライセンスを表示」というボタンがあります。
これをクリックすると、ポップアップウィンドウでこのアセットにどのような追加ライセンスが存在するかの説明が表示されます。
このアセットの場合は、「Apache License Version 2.0」が宣言され、このライセンスを使用しているライブラリがアセット内に含まれていることを指します。
みなさんが普段プレイするゲームアプリの中で、設定画面やクレジット画面から「ライセンス」「権利表記」などの名前でライセンス表示のためのページを見たことがあるかもしれません。それらは、アプリの中で見えるようにライセンスを表記する必要がある、という規定がライセンスによっては決められているからです。
Apache Licenseの詳細についてはこちらをご確認ください。
Apache License, Version 2.0
もし、個別ライセンスが適用されており、かつそのライセンスが「クレジット表記をする」ことが条件として含まれていた場合、ゲームのプレイヤーが直接目に触れる場所にその表示をする必要があります。
実はこれはアセットストアに限らず、github等で公開されているライブラリを使用する場合も同じです。最終ビルドに何のアセットが含まれているのか、確認するようにしましょう。
利用する人数分のライセンスが必要なアセット
スクリプト系やエディタ拡張系では、利用するチームの人数分購入することを求めるタイプのアセットがあります。
アセットストアの利用規約とEULAでは、同一法人かつ同一拠点で開発するゲームでアセットを使う場合、主な使用者あるいはアセット購入用のアカウントで購入していれば大丈夫です。(たとえば背景アーティストがモデルに使用するテクスチャアセットを購入して使用する、など)しかし、そのアセット使用者全員分のライセンスを必ず購入する必要があると規定しているアセットもあります。
アセットを複数人数で利用するのはケースバイケースであるため、アセットストアの利用規約やアセットの説明文、アセットに同梱されているライセンスをよく読むようにしましょう。
(だれかが購入したアセットを含むリポジトリをチーム内で共有していいのか、など)
「初心者向けアセットストア講座」まとめ
本稿でアセットの基本的な使い方とその概要、注意事項などについて確認できたと思います。つづく投稿ではアセットストアの「脱初心者編」として、もうすこし踏み込んだ使いこなしテクニックについて紹介していきます。たとえば、検索をうまく使う方法、タグによるダウンロードマネージャーの整頓などを実践していきます。ご期待ください。
アセットストアを活用して、快適なゲーム開発ライフを目指しましょう!
この記事を書いた人
一條貴彰株式会社ヘッドハイ 代表取締役
ゲーム作家・Game DevRel。小規模ゲーム開発者がもっと活躍できる世の中作りを目指して、ゲーム開発ツール・サービス専門のDeveloper Relation事業を行っています。ゲーム作家としての代表作は『Back in 1995』(Steam)。